最近のエッセイ(62)

2021年3月31日       決死の覚悟で

 昨年の11月、私の母親と長らく一緒に暮らしていた従妹が、認知症の悪化で施設に移ったことは前にも書きました。その時は家財一式を業者に頼まず、私が自分で整理し、何とか公団住宅を明け渡してきましたが、その従妹に乳がんが発生し明後日4月2日から10日間、清瀬の複十字病院に入院し、がんの切除手術を受けることになりました。この病院は、15年前私の母親が胃ろうの手術を受けながら、どうしたことか手術の翌日に死亡した、いわば、曰くつきの病院です。その時は、怒髪天を衝く思いでしたが、争ったところで母親が戻ってくることもありません。医事論争は大方患者側が負けることもわかっていたし、母親も93歳でしたから、これも天命と諦めましたが、今度は従妹の手術です。私は保証人として見守る以上、何かあったら承知しないぞ、の態度でいよう、と自分に言い聞かせています。彼女には横浜のランドマークホテルの従業員組合の組合長てあった実の弟はいるのですが、住まいが相模原なので、距離的には練馬の私の方が近いのです。従って、2日は朝から清瀬の病院へ行く予定になっています。

 ただ、何より躊躇われるのは病院がコロナ菌の巣窟になっていることです。全国の津々浦々の病院という病院がそうであって、安全な病院など一つもないでしょう。折角、ここまで感染せずに来たのだから、この山を何とか無事にやり過ごさねばなりません。消毒液を多量に持参し、電車にもバスにも乗らず、車は離れた場所に駐車し、マスクを2重にし、着て行ったものは、すぐ脱いで破棄する覚悟をもって、明後日、清瀬の複十字病院へ向かいます。

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        わが魂よ 存在の意義の根本を解くことは

    お前には出来ない

    博識ぶって 小賢しい理論を

    振りかざすことなど 更に出来ない!

    ならば 盃に酒を なみなみとと注げ

    琥珀色の液体に身を任そう

    今という時間の 色どりを変えよう

    お前が次の世で

    極楽に行けると思うかえ

    そんなこと 少しもきまっていないのだから

 

2021年3月30日        青いテントは国の恥 

 一昔前、浅草隅田川沿いの桜並木の下は、路上生活者の青いテントでぎっしり埋まっていました。炊き出しが行われる上野公園の一角は、時間になると数百人の行列ができていました。青いテントは新宿駅から東京都庁に続く地下道にもありました。大阪にもありました。大阪市庁舎の周辺は青いテントだらけでした。定年後務めた朝日学生新聞社の関西支社があったおかげで、2,3ヵ月に一回はそこを通りました。20年後の今、隅田川から青いテントが消えました。新宿の地下道にもありません。大阪も同じ、と聞き及びます。すべて、行政の力によって対策が講じられたお陰でありましょう。

 いま、路上生活が増え始めています。コロナのせいで職を失い、家賃も払えなくなり行きどころがなくなったからです。今朝のテレビは妙齢の女性の路上生活者を取材していました。朝早く起きて行ってみないとわかりませんが、恐らく、浅草隅田川周辺も、上野公園も、新宿の地下道も、路上生活者で溢れ出しているのではないでしょうか?

 今こそ、行政の出番でしょう。行政はどのような時代でも弱者の味方でなくてはなりません。私たちはそのために税金を払っているのであって、役人たちの会食のためでは決してありません。まず、無料の炊き出しから始めてもらいましょう。食料など有り余っているではありませんか。「ナニ、人手がない?」 職を失ったひとが大勢いるではありませんか! 無聊をかこっている高齢者を使えばいいではありませんか!廃業に追い込まれた飲食業者の私設を使わせてもらうことも考えられます。

 恐らく、コロナ禍はワクチンが行き渡るまで、数年続くでしょう。感染者が減ってはいても、それをいいことに、「ゴーツートラベル」「ゴーツーイート」が復活しそうな勢いです。またまた「セカンドフロアー」がしゃしゃり出てきました。政治の貧困を憂います。

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           私はときおり

      自らの行為を懺悔する

      雪で輝いた山を見れば

      遠いところからくる 時間というものを

      永久に感じる

      ひろびろとした眺めに対するときも

      鋭角な人の豊麗が匂ってくるのだ

      豊麗なものに 離れられない

      離れなければ 一層苦しいのだ

      その意志の方向を 先回りすれば

      もう 一面に桜が咲きだし

      春浅い山々に まだたくさんに

      雪がかがやいている    ー室生犀星ー

 

2021年3月29日          爆 音

 それは午後3時から始まります。低空姿勢をとって羽田へ向かう旅客機の爆音です。練馬の私の家の正に上空から中野区、渋谷区、港区などの都心を抜ける航路は、どうやら半年ぐらい前から開設されました。進入航路はもう一つあって、少し東寄りの池袋あたりから羽田へ降りるものです。遠くても爆音は響いてきます。交互に着陸するようで、爆音が途絶えることがありません。

 

 非常事態宣言の最中は実に静かでありました。乗客がいなくなったからでありましょう。明けた途端、爆音が復活しました。弱ったものです。

 が、全日空は半年間で1884億円の赤字です。国際線で96%、国内線で79%もお客さんが減りました。最終的には年間で5100億円の過去最大の赤字になるそうです。一方、日本航空のお客さんの減り方は国際線で95%、国内線で68%で、現在2127億円の赤字、最終的には3000億円を超えるようです。両社とも人員整理は避けられないようで、キャビン・アテンダントの中には岩手の三陸鉄道に働き口を求める事例もあるようです。

 この冷酷な現状を鑑みれば、爆音が煩いだの何のと言っては罰が当たるというものでしょう。

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     国会議員のオショクジケンが問題となった

   確かに、会議が深夜に及んだ場合

   無料のオショクジケンがでた

   それが問題となった

   新聞が書いた

   「議員のお食事券は 汚職事件である!」

 

 

2021年3月28日          芽吹き

 自宅の二階の仕事場に続く猫額のベランダへ出ると、目の前は大きな洋ナシの木です。家を建て替えた時からですから、かなりの年月を私と共に過ごしています。白い花を一杯に咲かせ、小さな実をつけ、やがてたわわに熟すのですが、どういうものか実が硬くてあまり美味しくありません。11月になると葉が散りだし道路を掃き清めるのが日課になります。全くの<用ナシ>なのですが、何故か、長い年月を共に過ごして来ているので愛着が生じ、息子らは切ってしまえというのですが、とても、とてもその気になんぞなれません。

 コロナのお陰で昨年4月頃から、自宅蟄居を強いられ、毎日、毎晩仕事場にいるお陰で、この<洋ナシ>を見るとは無しに、見入ってしまう機会が多くなりました。季節によって変わりゆくその姿を、愛おしく思うようになりました。そして今日、上を目指す枝だけになった壁際の一本に白い花が5輪咲いているのを見つけました。白壁に接しているお陰で温度が他より高かった結果でありましょう。気のせいか、梨の木全体の枝先が膨らんできているように見えます。「イノチ」がたぎり始めたのを強く感じるとともに、私も負けないようにしなければ、と自分に言い聞かせたのでありました。

                 

       天よ

       滅亡は あなたの憎しみの表れ

       無情は あなたの毎日の務め

       大地よ わが大地よ

       あなたは限りない愛だ

       秘められた たくさんの

       尊い宝を

       そのふところに 入れて下さる

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2021年3月27日       変るものと変らないもの        

 3月も後半に入り、東大の合格発表も終わりました。また、4月からは新社会人が続々誕生します。特筆したいのは学生に人気のある、つまり、応募数の多い企業が昔と様変わりしていることです。人気度の高い企業10社は次の通りです。三菱商事、三菱地所、三井不動産、伊藤忠商事は変わりませんが、銀行が全くなくなりました。僅かに日本政策投資銀行だけとなりました。いま、日本の銀行は通帳を作るにもお金が必要です。新聞社、出版社、テレビ会社は既に下位に後退し、電通でさえ上位10社に入ってきていません。僅かに講談社と、KADOKAWAが上位に位置しています。紙産業以外の目的を持ち始めたからでありましょう。NHKも日本航空、全日空はすでに後退しています。

 一方、ほとんど変わらないのは東大合格率の高い高校です1位の筑波大駒場は首位を守り続け、開成、灘、聖光学院、栄光学園、駒場東邦と続きますが、2位に女子高の桜陰、また渋谷教育学園幕張が8位に入ってきているのが最近の傾向です。そして9位が甲陽、10位が鹿児島ラサールです。一昔前は都立の新宿、西、日比谷などが上位組でしたが、どうなってしまったのでしょう。今度、生まれ変わってきたら、猛勉強して東大医学部に入り、医学の研究者になるつもりです。      

 

   江戸時代の武家社会では ユーモアが欠落していた

   二人の武士が向き合った

   「貴殿の ただ今のお言葉 拙者を愚弄するもの       

   と心得た」

   「な 何もそのような ただ モノに例えて戯言

   に言い換えたまでのこと 笑い飛ばして
                       くだされい」

   「戯言とは何事か!笑い飛ばせとは

      不埒千万 いざ 尋常に勝負いたせ!」

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 2021年3月26日          聖火リレー 

 昨日から聖火リレーが始まりました。福島浜通り広野町の体育センターで式典が行われ橋本聖子委員長の号砲を合図に選手が走り出しました。広野町の隣が富岡町、夜ノ森町、大熊町、原発炉心に最も近い双葉町、浪江町、小高町、南相馬市と選手は走ります。昨年はリレーの途中でオリンピックの延期が決まりました。今年はどうなることでしょう。 開催か、中止か、更なる延期か、世界各国の世論調査の結果が出ています。

 まず、開催すべきは、アメリカ24,5% フランス25,8% 中国17,9% 

韓国3、0% タイ4,4% 日本26,1%、、、、、

続いて中止すべきは、アメリカ21,7% フランス50,7% 中国26,0% 

韓国58,3 タイ26,5% 日本37,9%、、、、、、、

 更に再延期すべきは、アメリカ52,7% フランス19,9% 中国56,1% 

韓国36,4% タイ69,1% 日本34,0%、、、、、、、、

 最近の報道によれば、開催されても外国からの観客の日本入国は拒否される、とのこと。コロナの変異種の入国を恐れての決定でありましょう。そうまでして、開催に固執する理由は何か? 国際オリンピック委員会のせいです。莫大な電波料収入が入ってこないと委員会の存続が危うくなるからです。そうして、この委員会に先んじて中止・延期を申し出るのは日本国の「メンツ」に関わるからでありましょう。

 日本のコロナ感染者数が世界の趨勢の10分の1程度であっても、非常事態宣言の解除と共に変異種が猛威を振るいだしています。果たしてこの先、聖火リレーはどうなっていくのでしょうか?      

 

    泣いじゃくりするたびに

    梅の花の匂いがしてきます

    いつからかすねてるに 誰も探しに来てくれず

    壁の穴から続いてる 蟻をみるのもあきました

    壁のなか 蔵のなか 誰かの笑うこえがして

    思い出しては泣いじゃくる そのたびに

    花の匂いがしてきます   ー金子みすゞー

 
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2021年3月24日        「ライン」よ、お前もか

 日本人の8600万人が利用している「ライン」は誠に便利です。従来は海外に電話するとかなりの通話料がかかったのに、ほとんど無料で出来るようになっています。画像も送れるし、数人で座談会まで出来るのです。恩恵は計り知れません。ところがここへきて、通話記録のすべてが、韓国を経由して中国に格納されている事態が判明しました。日本人8600万人の個人情報が筒抜けになっていたのです。

 昨日、ラインの経営者が記者会見し、この事実を認めるとともに謝罪しましたが、従来の膨大な記録を削除するとまでは言及していません。中国がこの日本人の個人通信記録を利用しようとすれば、それは可能になるのです。一方、中国のITを利用しての個人情報の収得は止まるところを知りません。スマホを使っている以上個人のあらゆる情報は共産党首脳部に筒抜けになっているのは、すでに常識になっています。13万人を超えるその道の従事者が14億5000万人の個人情報を日夜精査しているといわれます。何のために? それは体制に反旗を翻す個人をいち早く発見して処分するためでありましょう。新疆ウイグル自治区では街中いたるところに監視カメラが設置されていて、不審者とみれば、即、収監されています。それと同じことを世界中の国々でやろうとしているのが、中国共産党の世界戦略なのでありましょう。それがやっとこの頃になって世界中が分かってきたので、中国包囲網が出来上がり始めました。とはいえ、例えばヨーロッパの国々では、特にEUでは中国が最大の貿易相手です。貧しかった中国の安い賃金を目当てに生産工場を林立させ、利益を享受していた先進国は、今になってITでは傑出した技術力を持つまでに成長した中国に痛い目に合っているのです。因果応報といえばそれまでですが、問題は、中国が軍備拡張のためにIT技術を進化させているところにあります。中国の野望がアメリカを凌駕し、世界に君臨しようというという下心が次第に顕著になってきているのです。世界中の人間の個人情報を自国の管理下に置いてしまえば、それが可能になることを、中国は既に知ってしまっているのです。アメリカは今頃になってそれを知り、トランプ政権の頃から中国排除に向けて舵を切りましたが、日本はやっと今頃になって「ラインよ、お前もか!」と気付く有様なのです。

 知ってどんな利益があるのか、私のパソコンにもIPADにも、「お前の個人情報は狙われている。ここにアクセスせよ」としっきりなしに入ってきています。心すべきことです。

          さくらのはなさん さいたけど

    きだからあるいて こられない

    みんなで みんなで

    みにいって あげよう

    ゆきのふるひも かれないで

    きょうまで たってて

    さいたのよ

    みんなで みんなで

    ほめにいって あげよう

              ーまど みちおー

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2021年3月23日      知らなかった

 今年の確定申告は複雑になったので、練馬民商の横山さんという年配の女性計理士に頼みに行きました。永年に亘って「有限会社中沢商事」の決算書類を手掛けてもらった方です。ふとしたことからこの方が福島郡山の出であることが分かり、期せずして「福島の桜」に話が及びました。三春の枝垂れ桜、夜ノ森町の500本の桜、本宮の蛇の鼻公園、二本松の霞が城、郡山の開成山、会津城、そして福島市の全山桜の花見山などなどに話が及びましたが、彼女は福島の桜は何といっても会津喜多方の「日中線跡の枝垂れ桜」こそ福島一だというのです。「ええー?」となりました。

 福島県を5年も担当したのに、この名前を聞いたこともなかったからです。早速ネットで調べてみて驚きました。喜多方の郊外の計画だけで実現されなかった線路の両脇に枝垂れ桜が何百本も植えられ、見事な遊歩道になっているではありませんか。しかも、三春の枝垂れに勝るとも劣らない老木の大行列です。「知らなかった?!」と深いため息をついてしまいました。私は福島市の全山桜の「花見山」が福島一だと主張し、横山さんは日中線跡こそ福島一だと譲りません。税務申告そっちのけで桜談義となってしまいました。さて、今日は快晴の絶好の「桜日和」 せめて今年は「練馬の桜」で我慢です。

 

          雲を濾し 

       まことにあかるくなりし空かな

       子ら 歓呼して ことごとく

       走りいでしも 宣なれや

       風のヒノキは

       みだるる みだるる

                ー宮沢賢治ー

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2021年3月22日      一力遼君がんばれ

 芸事の世界では、年を重ねるごとに円熟味を増す、といわれますが同じ芸でも勝負の世界になるとそうはならないようです。例えば将棋と囲碁。立派な芸事の世界ですが円熟味を増したからといって勝てなかったら、どうにもなりません。

 毎日曜日の昼から放映される「NHK囲碁トーナメント」の決勝戦が昨日放映されましたが、一力遼君が優勝しました。若干23歳。彼は21歳の時にも優勝しているので返り咲きです。相手は台湾出身で22歳の余君。解説は21歳の芝野虎丸君。彼は棋聖戦のタイトル保持者です。3~4年前までは当時二十歳前後の井山裕太君が7つのタイトルを独占していました。NHKのタイトルも彼でした。その彼といえども既に30歳近くなり若手に押されっぱなしです。その前は同じNHKの全国子供大会の決勝戦を争った中学一年の高尾伸治君と6年生だった山下君がプロ入りして大活躍していました。いくつものタイトルを取った二人は今も活躍中ですが、台頭してきた次世代の若手棋士には勝てないでいます。

 今回優勝した一力遼君は、ごく最近まで日本棋院の院生でした。麹町に部屋を借りて母親と一緒に住み、市ヶ谷の日本棋院へ通っていました。それが、今や若手三羽カラスといわれるように伸びに伸びたのです。ところで、一力遼君の父親は現河北新報新聞社社長一力雅彦です。お爺さんが一力一夫。一夫さんの弟が一力英夫。私が朝日へ入社して千葉県へ出た時、彼は隣の埼玉県担当でした。一力さんが北関東の部長の時、私は次長として補佐しました。彼の仙台二高に連なるの幅広い人脈のお陰で、多くの知名人との知遇を得ました。それだけに、一力遼君の大活躍が好ましく思えてなりません。でも、国内戦ではタイトルをとれても海外戦となると日本は何時も第三位です。中国と韓国の若手は余りにも強い。更に囲碁のA1を恐ろしいぐらいに勉強しているせいで、日本勢はいつも劣勢の連続。一力遼君にはタイトルを獲ったからといって慢心しないで、海外戦でもタイトルを奪ってきてほしい。恐らく、一力一族、河北新報社の皆さん、そして宮城県人みんなの願いでありましょう。    

   

     ふと思い出す あの町の 川のほとりの 赤い屋根 

    そうして 青い大川の 水の上には白い帆が

    静かに 静かに動いてた そうして河岸の草の上

    若い絵描きの小父さんが ぼんやり水を見つめてた 

    そうして 私は何してた 思い出せぬ と思ったら

    御本の挿絵で ありました

                      ー金子みすゞー

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2021年3月21日          ヤンチェチー

 一昨日のアンカレッジにおける米中首脳会談は激しい言い合いの末、物別れに終わりましたが中国を代表して出席した2名のうち、一人は外相のワンさんですが、もう一人の楊潔政治局員とは何者なのでしょうか? 名前の発音は「ヤンチェチー」さんです。調べてみて驚きました。前外務大臣でありました。最重要の7人の会には入っていませんでしたが、次の重要ポスト25人の政治局員の構成員の一人でした。三年ほど前、中国代表として安倍内閣を表敬訪問し、習近平の国賓訪日のお膳立てをした人物でした。つまり現外務大臣の先輩にあたるわけで、肩書がないからといって軽視してはいけない人物でした。とすれば、今回のアンカレッジでのアメリカ民主主義非難の激しい言葉は、決して思い付きの発言ではなく、外交の長年の経験者として、彼が培ってきた世界との付き合いの中での、その発露としての発言であったとみるべきでしょう。参考のために彼の写真を掲載させてもらっておきますが、広い額と、いかにも中国的な顔立ちは彼がただ物でないことを際立たせています。

 バイデン政権の二人の大立者を前にして、「アメリカの時代は終わった」と大見えを切るなんぞ、ちょっとやそこら見識ではできるものではありません。世界人口70億人のうち中国人は14億5千万人です。5人に1人は中国人です。今回の会談は全くの物別れに終わったとはいえ「ヤンチェチー」の切った「啖呵」は見ごたえがありました。おそらく中国人の三分の一は「快哉」を叫んだでしょう。だが、三分の一は「この先」を危惧し、残りの三分の一は何が何だかわからないでいるでしょう。

 

        

        道の駅は 新鮮な農作物が買えるので人気がある

        宣伝文句が面白い

           朝堀の竹の子   3時間前は土の中でした

           生みたて卵     3時間前はトウモロコシでした

           搾りたて牛乳    3時間前は草でした

          (問題は 夕方になっても看板の文句が

                   そのままであることでした)

楊潔 - Wikipedia

2021年3月20日         やがて武力衝突か

 喧嘩は得てして、相手の気に入らない行動に対する非難から始まります。浴びせられた非難が、例えセイコウを得ていたとしても、相手側は傷つき反論を重ねます。こちら側には、こちら側の正当な理由があるのだと反論します。反論に窮すると感情的な罵倒が始まります。その応酬が極限に達すると武力行使が始まります。それが歴史の常です。昨日それが、アメリカのアンカレッジで行われた米中二国間協議で口火を切られました。

 バイデン新政権のブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官は、まず、日本と韓国を初訪問して、同盟関係を改めて確認したうえでこの会議に臨みました。中国側は王毅外相と楊潔政治局員です。アメリカ側は新疆ウイグル自治区や香港の人権問題、台湾への不当介入、南沙諸島問題などをあげ、「中国の行動は世界の安定を維持する秩序を脅かしている」と非難しました。中国側は激しく反論しました。「世界の大部分の国はアメリカの価値観が国際的な価値観だとは認めていない。アメリカにはアメリカの民主主義があり、中国には中国の民主主義がある」、「中国への内政干渉は横暴以外のなにものでもない」と切り捨てました。更に、「アメリカは自らのイメージを改め、自らの民主主義を世界中に推し進めることやめるべきだ」、「アメリカ国内の多くの人は、アメリカの民主主義をほとんど信頼していない」、「中国の社会システムを中傷してもどうにもならない」、「アメリカは世界を代表する国ではない」とまで言い切りました。普通なら共同声明や共同文書が出されるのに、激しい言葉の応酬だけで、この会談は喧嘩別れに終わりました。

 こうなってしまうと、次に予想されるのは武力による小競り合いではないでしょうか。南沙諸島や、尖閣列島での武力行使が現実味を帯びてきました。アメリカ、オーストラリア、インドそして日本の同盟化が強化される一方、イギリスやドイツまでもが南沙海域に空母を派遣する声明を出しています。韓国は現政権が北朝鮮や中国寄りであるため困惑の極みであっても、国内にアメリカ軍基地がある以上、行動に制約が加わっても反中国で舵を切らねばなりません。最初の小さな武力衝突がミサイルが飛び交う大規模戦争に発展する例を、私たちは世界史の中でイヤというほど見てきました。でも、これは歴史の必然です。悲しいけれどこれが人間の持っているサガでありましょう。

      農繁期になっても  人手がないため農家は 

  止む無く田植え機や、コンバインを高い金を

  払って買った どの農家も機械だらけになった

  やがてその機械を動かす人もいなくなった

  機械が集まって相談会を開いた

  「おれたちどうすっぺ 」「やっぱし 都会さ

  出てゆくほかねえんでねえの」「うんだうんだ」

  高速道路は渋滞し、農林水産省は機械で埋まった  

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2021年3月19日           あおり運転

 テレビでは時々、あおり運転の実態が放映されます。今朝のテレビ朝日のモーニングショウでもそうでした。ただ、なぜ、あおり運転に至ったかの原因については往々にして放送されません。ドライブレコーダーを解読する手間が面倒だからでしょうが、私自身、相手の身勝手な運転に「ムッ」としたり、「カッ」となったりして、「この野郎」とアワや仕返しをしてやろうか、と思ったことは何度もあります。幸い、直ぐに冷静さを取り戻すことのできる体質であるため、今まで無事故・無違反でこの歳になっても運転しています。

 国際免許を取得し、タイ・チェンマイでニッサン・マーチを運転してきましたが、運転マナーの悪さは一位の中国の次にこの国がなるのでしょうか。相手のことなどどうでもいい、自分さえよければいい、という運転が横行しています。車間を少しでもとれば、すかさず、後ろから割り込んできます。バイクの洪水がそれに輪をかけます。かろうじてヘルメットだけは付けていますが、隙間が少しでもあれば突っ込んできます。信号機は幹線道路だけについています。街中の十字路を通過する場合はまるで神業を駆使しない限り取り残されます。横断歩道らしき白線はあっても車もバイクも完全無視です。チェンマイより酷いのはバンコックです。タクシーとバイクタクシーを使いましたがチェンマイ以上の大渋滞でした。恐怖の極みはバイクタクシーでした。渋滞中の車と車の僅かの隙間を見つけて、かき分けへし分けしてして進みます。両足が車のドアーを掠めてもお構いなし。怖かったけれど目的地には早く着きました。

 運転のマナーの悪さと渋滞の度合いが世界一悪いのが中国上海ではなかったでしょうか。従弟靖輝君のの商売相手「虞」さんの車かタクシー利用でしたが、どこもかしこも渋滞で我先運転でした。マナーもヘッタクレもありませんでした。その時は紅橋空港から街中まで高速道路の渋滞で30分の距離が4時間かかりました。

 運転マナーにかけては、私は日本が世界一良いと実感しています。道を譲り合い、そのたびに手をあげたり、ウインカーを点滅させてお礼を言ったりする作法はどの車も自然にやるようになりました。これをやらなかったために「カチン」ときてあおり運転に発展した、という例もあるようです。
 

            人生は その日その夜を

     嘆きのうちに 過ごすような人には勿体ない

     君の器を 葡萄の血潮で満たせ

     琴の調べに 耳を傾けよ

     どうせ 同じ土に還るとしても

     嘆きだけの人生だったら

     受け入れる大地は ため息をつくだろう

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2021年3月18日                   黄 砂

 中国奥地に広がる砂漠の微小の砂粒が風に吹き上げられ、偏西風に乗って日本にまで被害をもたらすことは、これまでに何度もありました。北京の空全体が黄土色に染まっている写真を見ながら、さぞかし、人々は大変だろうなと思いはするものの、何で我々日本人までもがその巻き添えを食わねばならないのか、少々腹が立ってしまいます。そうでなくても世界中が苦しんでいるコロナは中国武漢の発生です。微生物研究所の不手際から漏れたものです。世界に対して自己の過失を詫びるどころか、自分たちが作ったワクチンを分けてやってもいいぜ、という横柄な態度です。

 折から日本は花粉の季節。いよいよ、たけなわになりつつあります。何度、目を洗ってもまた痒くなる、くしゃくしゃする。鼻もムズムズ、気分も塞ぐ。コロナは戸を開けて換気しろという。花粉は戸を閉めて外気を入れるなという。一体どっちにすりゃいいんだ?それに加えての黄砂です。折角の桜の季節だというのに、、、、こちとら老い先短いというのに、、、、、
  

               明日よ 明日よ

      そなたはわたしの前にあって

      まだ踏まぬ 未来の

      不可思議な路である

      どんなに苦しい日にも

      わたしは

      そなたに憧れて励み

      どんなに楽しい日にも

      わたしは

      そなたを望んで

      躍りあがる

           ー与謝野晶子ー

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2021年3月17日     タイの新幹線計画

 日本の新幹線は世界の羨望の的です。しかし、インドネシアのジャカルターバンドン間の争奪戦では中国に負けました。詳細な設計図を中国に盗まれ、賄賂がまかり通り散々でしたが、大統領が客家出身の中国人であったことが最大の原因でしょう。しかし、決まったはいいけれど今もって工事は進捗していません。ジャカルタの地下鉄は日本が工事を請け負い、開業していますが、その快適さを身をもって感じた人々は「なぜ日本を排除したのか?」と反省しきりのようです。

 今度は、タイ国が日本にオファーしてきました。バンコックーチェンマイ間の新幹線設置計画です。タイはプラユット首相の軍事政権ですが、今のところ、三つの鉄道建設計画があります。二つ目はバンコックからラオス国境に近いノンカイまでの500キロ、バンコックから南の果てのバタンブサールまでの800キロです。ノンカイまでの線は中国が受注し、ごく最近起工式が行われました。チェンマイまでの路線は日本が受注に成功し調査を始めていますが、問題はインフラ整備が薄いタイ国に、果たして新幹線導入は問題なし、といえるのかどうかです。

 数年前、チェンマイからバンコックまで列車に乗りました。午後8時発、といってもまだ明るい10両編成の列車です。ジーゼル車に牽引された列車には個室もあり、食堂車も付いていました。二段ベッド付のファーストクラスだったのですが、揺れたのなんの、寝るどころではありません。恐怖の10時間を過ごしました。保線状態が悪いからでしょうか、揺れるあまり、いつ脱線するかと身構えながらまんじりとも出来ずに明け方6時、駅舎だけは立派なバンコック駅に着きました。チェンマイへの帰りはバスにしました。不思議なことにタイでは道路が整備されていて、バスは少しも揺れることなく6時間で着いてしまいました。無料のお弁当やお菓子が配られ沿道の緑も堪能出来て快適でした。この距離は飛行機だと1時間です。ただし、料金は8000円ほど。列車の4倍ほどです。

 この区間を日本の新幹線が走ったとしても、採算が取れるでしょうか? 673キロの間にこれといって大きな町はありません。工業団地もありません。森と原野ばかりの平野が続きます。速く走ったからといってどうだというのでしょう。高い運賃を払って人々は新幹線を利用するでしょうか? インフラ整備もなく、工業団地も存在しない原野を、列車だけ早く走ったからといって、住民の利益になるでしょうか?

 同じことはインドネシアでも言えるように思います。横取りした中国は今後苦しむでしょう。日本の新幹線の成功は、国土が狭く、人口が密集した街が極度に連なり人々の収入が豊かだからの結果ではないでしょうか。
 

         5歳のモエ ちゃんは お母さんの髪に

    白髪を見つけた「どうして白髪になるの?」

    「あなたがお母さんに 苦労かけるからよ」

    「そーなの するとお母さんは

      モエちゃんより悪い子だったのね」

    「なんで?」

    「だって、お婆ちゃんの髪 真っ白だもの」 

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2021年3月16日       パスピエとアラベスク
 月に3回、ピアノの先生のところに通い始めて、明日で5回目になります。4回目までは自分のレパートリーになっているショパンの前奏曲4,5番、雨だれ、メンデルスゾーンの無言歌、グリークの3,4曲などを復習の意味で弾いてきましたが、明日からは いよいよ ドヴィっシーのパスピエとアラベスクです。パスピエは左手のほとんどがスタッカットの連続で、しかもそれを軽やかなタッチで弾かなければなりません。アラベスクの方は反対に優雅にメロデックなタッチが要求されます。
 20年前はその両方が出来ていました。今はどうでしょう?足を怪我した馬がどたどた走るようなパスピエです。しかもミスタッチの連続。昔は暗譜でも弾けていたのに、いまは楽譜通りに指が動いてくれません。このところ毎日1時間以上ピアノに向っているのに改善の動きがありません。いつも同じところでミスタッチをしてしまうのです。馬齢を重ねるとはこういうことか、とつくずく情けなくなりました。
 原因のすべては反射神経の欠如にあることぐらいは想像がつきます。問題はこの反射神経が反復練習によって回復するのかどうか、高齢になってからはそれは無理なのかどうか、医学的に知りたいところです。練習を繰り返しても進歩は不可能ならばこの先は徒労に終わるだけです。一方、コロナによって怠惰な毎日を強制されている身にとっては、強制的にピアノ向かわされるのは大きな刺激でもあります。
 ドヴィっシーのパスピエとアラベスク、この大好きな曲を昔どうりに弾けない余り、つい愚痴が出てしまいました。ミスタッチの連続で、しかも進歩がない以上、もうピアノは止めようか、それでもいいから続けて行こうか、今はハムレットの心境です。

 

         うちの子 もう3歳になるのに

   何で言葉をしゃべらないのかしら?

   困ったものだ

   どの医者に見せても異常はないというし

   ある朝 味噌汁に口をつけた坊や

  「こ・の・お・つ・ゆ・か・ら・い」

  「まあ嬉しい どうしてしゃべらなかったの」 

  「いままで 何も文句がなかったからだよ」  

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