最近のエッセイ

 2020年7月13日        尾畑春夫さん

 熊本・人吉の繁華街は一階の軒先まで洪水となり、いま、住民は必死で後片づけに追われています。そこに、赤いタオルではちまき姿の尾畑春夫さんが現れ、朝五時から夕べの五時までボランテア活動をしています。

 数年前、山口県の山中で子どもが行方不明になったとき、彼が駆けつけて一発で発見した時から有名になりました。災難があると彼は全国何処へでも駆けつけます。軽自動車に寝泊まりし、パックご飯にお湯をかけ、僅かなオカズで一日を過し、一切の報酬を受け取りません。魚屋をやっていたときの僅かな年金で暮らしています。しかも彼は御年80才。若い年齢のボランテアに負けず劣らずの労働をしているのです。私は彼の姿に宮沢賢治の「雨にも負けず」の「そういう者に私はなりたい」を投影しています。「生きている限り人様のお役に立つ」を彼はこともなげに実践しているのです。それに比べて、私の80才の現在は何たる堕落の極みであることか!心の底から恥じ入っています。  

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 2020年7月12日            夢 

 昨晩、奇妙な夢を見ました。自分がコロナに感染し「どうしよう」と悩んでいる夢です。もし、そうなった場合は、誰にも知らせず自宅に籠もり、成り行きに任せよう、と以前は決めていたのですが、家人や、息子達の家族に迷惑がかかる訳だから、隔離されることの選択肢もあるのではないか、と私は夢の中で煩悶していました。

 片や、もし治った場合、私の中のコロナ菌は全部が死滅し、いわゆる抗体が出来ているのだろうか、それとも、まだ残っていて私が接触する人への感染力はあるのだろうか、それが問題だ、と私は夢の中で考えました。

 それにしても世間一般では、治った人の情報が不足しています。治った人は身体中からコロナ菌を排除出来ているのか、再び発病することはないのか、抗体が出来ているとすれば、それは二度と感染しないものなのか、それとも再度の感染はあるのか、どうなのか、私は夢の中でいろいろ模索していました。

 なんとか、コロナから生還した人々の生の声が聞きたい、医学的見地からの抗体の可能性について知りたい、と私は夢から覚めて切実に思ったことです。

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(スイスの山村に咲くキンバイソウ)

2020年7月11日         雨 蛙 

             雨蛙「俺も日差しを拝みたい」

 朝刊の川柳欄で見つけました。クスッとしました。なかなか秀逸な川柳です。でも日本の雨蛙たちはまだしも幸せです。時々、陽が射すからです。悲惨なのは 中国の雨蛙たちでしょう。20日間以上、豪雨と洪水が続いています。

           「日差しとは何だったのか」雨蛙 

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 (スイスの高原に咲く岩ナデシコ)

2020年7月10日                    ウヰスキー

 私の夜は30ccのウヰスキーから始まります。6月3日に空けた50年前の「グランツ」は十日も前におつもりになっていました。光が丘の「やまや」という酒店に行くと、高級ウヰスキーがガラスケースに陳列されています。最も高額なのはスカッチのモルトです。マッカランが18,000円です。とても手が出ません。サントリーの「山崎」や「響」は既に貴重品で店頭でお目にかかることがなくなりました。世界の大富豪が買い占めてしまう、と専らの噂です。日本のウヰスキーも最近は世界的になっているようです。廉いウヰスキーは1000円前後からあります。「バレンタイン」、「カナデアン・クラブ」、それに日本の「オーシャン」や「レッド」。ブレンドものは、やはり、それなりの味わいでしかありません。ふと、スカッチモルトの「グレンリベット」を見つけました。現役の頃、新橋のある「たまり場」にボトルキープしていた懐かしい銘柄です。

 酒店を経営する美人の後藤恵子さんが、店の前の建物の一階をクラブ形式の瀟洒な空間にしていました。ホステスなどいません。ボーイさんが一人世話を焼いてくれていました。酒店で買ったものをそこで飲むことが出来ました。テレビ朝日の丸山さんの紹介でその店に行くようになったのですが、各界の有名人が出入りしていて付き合いの幅が広がりました。従弟の靖輝君を連れて行ったとき、そこに岡本太郎さんがいました。杉野さんというお付きの妙齢のご婦人と一緒でした。話上手な従弟は太郎さんとすっかり意気投合し、その後も2回ほど太郎さんとの夜がありました。

 オマルハイヤームの「ルバイヤート」の至言が店内にそれとなく張られ、トイレの中にもありました。本を買って全文に目を通しましたが、どうも訳文が気に入りません。原文は読めませんから、手に入る訳文五冊を読み比べながら、自分流の一冊を作り上げました。題名を「トーヤイバル」としたのは「ルバイヤート」の逆さ読みです。このホームページのトップページの数冊の中に入っているので、クリックすれば誰でもお読みいただけます。そのクラブには週刊文春の編集長も来ていました。当時の名物編集長です。名前は失念しました。余りに朝日新聞を貶すものですから、酒の勢いもあって喧嘩になりました。その時、飲んでいたのが「グレンリベット」です。

 3000円を超える値段でしたが、包んで貰いました。やはり、ほんの少々、口に含んだときの香りと、のどを通過するとき感触は、スカッチモルトならではものでした。

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2020年7月9日          王朝が倒れる時

 古代中国の王朝が倒れるときは三つの要因が重なったときのようです。一つは自然災害、二つ目が疫病、三つ目がバッタ(蝗)です。バッタは今、中東やアフリカで猛威を振るっている「サバク飛びバッタ」ではなく、普通のバッタです。

 中国湖北省に端を発した強烈な不連続線は、豪雨を伴い重慶、武漢、南京、上海を水浸しにし、東シナ海を飛び越え、九州、岐阜、長野まで飛来しました。疫病は武漢に発し、全世界を恐怖の坩堝に陥れています。最後のバッタですが、これが中国北部の穀倉地帯に大発生しているそうではありませんか。

 中国共産党は例えて言えば、昔の王朝そのもです。自国はおろか、世界の覇権を握ろうと様々な手を尽くしています。「一帯一路」がその最たる例でありましょう。しかし、ここへ来て世界の趨勢が替わりました。世界の国々の人々が中国を嫌いだしたのです。関わりを自ら拒絶し始めたのです。中国国内でも習近平の責任を追求する声が盛んになり始めたのです。それの証拠が最高責任者である彼のブレーンである7人が一切なりを潜め、雲隠れしているらしいのです。

 歴史をひもどくと、こういう場合、為政者は国民の目をそらすために隣国との戦争を始めています。軍事行動をすることによって民意を逸らすのです。

 そう考えると、最近の中国の軍事行動が異常なまでに拡散している事態がうなずけます。南沙諸島、尖閣諸島への軍備拡大、多数の死者が出ているインドとの国境紛争、香港へ自由の締め付けなどなど。諸国の外交専門家の予測では、次は台湾への武力侵攻だそうです。そうなると、自由諸国は黙ってはいないでしょう。アメリカに与して台湾を守ろうとする国々は目白押しになるかも知れません。その時日本はどうするか? この先、外交的な難問が山積しているようです。到底、八方塞がりの安倍内閣では太刀打ち出来ないでしょう。と言って、この国際的難局に立ち向かえる優秀な人材が自民党内にいるか? 肌寒いばかりです。

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              (スイスのアルプス遠望)


2020年7月8日          分水嶺

 九州に甚大な被害を及ぼした中国湖北省発の暴風雨も、岐阜・長野まで来てようやく治まったようです。気象庁は最大級の警戒を要す、と発令していますが、これは「羹に懲りて、、、」の類いでしょう。思えば北アルプスを背にしている長野県の松本平が日本の分水嶺のように思えます。日本海に注ぐか、太平洋へ行くか、がそこで別れるのです。後ろ立山に降ると黒部川となって糸魚川から日本海です。上高地に降る雨は梓川となり、信濃大町から犀川となって信州新町から善光寺平で千曲川と合流し、信濃川となって新潟県を貫流し、新潟市から日本海へ注ぎます。長さのある川ですから水量も豊富で、途中の三条市が水浸しになったこともありました。

 一方、松本平の分水嶺を西側に逸れると、木曽川、天竜川となって太平洋に注ぎます。途中、諏訪湖が控えていて真冬は分厚い氷となります。忘れてならないのは北アルプスから南アルプスにかけて日本列島を分断する破砕帯の存在です。地球に異変が起きるときは、日本列島はこの破砕帯で真っ二つになると言われています。

 最近、JR東海と静岡県知事が会談を持ちました。東京と名古屋を結ぶリニア高速鉄道に付いての話し合いです。時速500キロで走るこの新路線は否応なく南アルプスの地下を刳りぬいて走ります。すると南アルプスを水源とし、静岡県民の飲料水となっている大井川の水脈を荒らすことになります。この親路線は、あろうことか静岡県には何の関係もありません。例え、アルプス山中に駅が出来たとしても、誰も好んでそこまで行かないでしょう。県知事は断固拒否しています。困ったのはJR東海ですです。地下トンネルの掘削を拒否されては話は振り出しです。はて、どうなるか?

 私自身は、静岡県持ちです。新幹線のノゾミに乗ればノンストップで名古屋へ着いてしまいます。時間は約1時間20分です。それが50分で着くからといって、地下トンネルだけを走りまくるリニア・モーターカーに果たして需要があるでしょうか?それに日本は名にし負う地震国です。まかり間違って乗車しているときに大地震が起きたら? 考えるだけでも背筋が寒くなります。静岡県知事さんよ、頑張って、頑張って下さい。

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2020年7月7日           酷 い

 熊本・球磨川流域の氾濫は酷い。映像を観る度に胸が締め付けられます。氾濫は人々がまだ眠りについている明け方に起きました。人吉市の繁華街で、朝方四時には濁流が一階の軒の高さまで迫っていました。川沿いの老人ホームでは数十人が逃げられずに死亡しました。しばらくして濁流は去りましたが街中が泥の山です。路線バスの車庫ではすべてのバスが水に浸かって廃車に追い込まれ、球磨鉄道は線路や鉄橋が崩落しました。文化財でもあった鉄橋が流されてしまったのです。バスも鉄道も、道路もなくなって人吉の住民はどうするのでしょう。胸が痛くなります。

 この災害をもたらした低気圧は、中国南部を襲った豪雨が海を渡って九州を襲ったと推測されます。何の恨みがあって九州までやってきたのか? 重慶、武漢、南京、上海でお仕舞いになってくれたらよかったのに、、、、、と思いながらユーチューブを覗くと、重慶がとんでもないことになっていました。昨日から今日にかけて豪雨と雹とに包まれ長江の水位が更に上がり、ほとんどの高層ビルの一階が水没しているではありませんか!辛うじて走っていた自動車も屋根まで水に浸かっています。重慶は三峡ダムの上流に位置し、ダムが危険を感じて放流しているにも拘わらず水位が上がった、と言うことは降水量が莫大であることを意味します。これで重慶は10日間以上水の中に閉じ込められているのです。高層ビルの人達は電気系統がやられ、エレベーターも動かずどういう生活になっているのでしょうか?

 日本はと言うと、巨大な暴風雨は熊本から長崎、佐賀、福岡、大分に飛び火しています。今度は筑後川の氾濫だそうです。

 それにしても、東京はコロナ以外の災難は降りかかっていません。だからといって油断は禁物。南海トラフ地震や首都圏直下型地震が取り沙汰されています。もし、南海トラフ地震が起きれば、30メートル級の津波が沿岸を襲うと言われています。

 自然災害は忘れた頃にやって来る、と言われますが、確実にやって来るのですから厄介です。願わくは、私の存命中に起きないで貰いたい。秘かな願いです。

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2020年7月6日      何でこうなるのか? 

 知事選の投票に行きました。かなりの行列が出来ていました。この分なら投票率も上がるだろうと思っていましたが、あに図らんや5割台。投票結果は小池百合子の圧倒的勝利。小笠原や八丈島、歌島、大島、それに青梅の先の東京の外れの市町村まで小池が独占。宇都宮、山本など2位から5位までの票をまとめても小池に及ばない有様。選挙で街頭に出ることなく、知事室に治まっていた小池の圧倒的勝利。イヤハヤ、コレハハヤでありました。何でこうなるのだろう? 

 私は不思議でなりません。例え負けるにしても接戦であることに期待していたのに山本太郎は遙か及ばず3位。東京都民であることがイヤになりました。

*小池百合子  3,527,619

*宇都宮健児    821,853

*山本太郎       642,392

*小野泰輔      586,420

*立花孝志       40,407       投票率  55,00%

 

2020年7月5日          免疫力と抗体

 昨夜、2時間にわたるNHKテレビで面白い番組を見ました。タモリと山中伸弥さんとの対談形式でしたが、身体に侵入したコロナの細菌が、如何に体内の免疫細胞と熾烈な闘いが繰り広げられるか、素人でも解るように、図解入りで、しかも面白く解説されたので、成程、成程、と理解出来ました。

 異端の新規侵入者に対して、身体の中の免疫細胞は全力を挙げて排除しようと闘います。その熾烈な様相は涙ぐましいモノでありました。コロナに打ち勝って退院した人の身体には、特異な抗体が生成されます。その人の血液から抗体を取り出し、重症患者に輸血すると、アラアラ不思議、快癒してしまうのです。ただし、万人に適用できるとは限らないようです。そこのところを、いま、世界の研究者は懸命になって追求しているとのこと。やがてはコロナを撃退するすべての人に適応出来る特効薬が生まれてくるに違いない、との感想を持つことが出来ました。

 コロナに感染しても軽症で済む人、重症になっても回復する人、その違いは何なのか? 世界の研究者が互いにシノギを削っている状況がよく分りました。2時間がアットいう間に過ぎる秀逸な番組でした。

 

2020年7月4日          球磨川氾濫

 夕べから今朝にかけて九州南部に豪雨が襲いました。1時間に114ミリの降雨量だったそうで、その結果、球磨川が決壊し、流域の人吉市、八代市などが被害を受けています。雨は今も降り続いているそうなので、被害は更に大きくなりそうです。既に自衛隊が出動し、ヘリが救助活動をしている写真がユーチューブに掲載されています。

 人吉に入るには球磨川に沿って走る電車です。絶景が続きます。恐らく路線も数カ所で決壊しているでしょう。九州在任中、私はその電車で人吉へ入りました。古強者の名物所長と人吉の名代の鰻屋で一献を傾けました。鰻は球磨川で捕れたもの、お酒は名物球磨焼酎。「伊佐美」、「佐藤」などのお湯割りです。喉へスルスル入るのでいつの間にかヘベレケ。千鳥足で球磨川添いの旧い旅館に倒れ込んだ記憶があります。八代はここも酒所。八代亜紀が「お酒は温めの燗がいい、肴は炙ったイカでいい」と唄った街です。

 球磨川の氾濫で、皆さんどんなに苦労なさっているか、胸が痛んでなりません。

 

2020年7月3日                 天網恢々疎にして漏らさず

 6月下旬から始まった中国湖南省・湖北省に降り注ぐ豪雨は止まるところがありません。上流で164のダムが決壊し、重慶の長江護岸は膝上まで浸水し被害は甚大です。三峡ダムの上流に位置するため水位が上がったのです。下流には宜昌、武漢、南京、上海などの大都市があります。三峡ダムが無断放水を始めたため宜昌は水浸しになりました。この街は「ドクダミ」の根を好んで食べることで有名です。

 三峡ダムの高さは147メートルです。もし、決壊したら? 武漢の街も大洪水です。コロナウイルスはこの武漢から全世界に広がりました。この街の住人は踏んだり蹴ったりでありましょう。それもこれも中国共産党のセイです。

 今、正に崩壊寸前だ、と言われる三峡ダムは中国共産党の肝いりで造られました。利権が利権を呼び、建設費のほとんどは賄賂で消えた、と言われる世界一の大きさであっても、曰く付きのダムです。落成式の当日、当時の党首であった胡錦濤は出席しませんでした。

 中国共産党は毛沢東から始まりましたが、誤った農業政策のため、3000万人の餓死者を出しました。そのあげく、紅衛兵事件が起きました。そして天安門事件です。戦車が民衆を踏み潰しました。もし、三峡ダムが決壊したらどうなるか? 6億人が被害を受けると言われています。天は中国共産党の存在を快く思っていないのではないでしょうか? 正に天網恢々、、、、、でありましょう。

 とは言っても、中国の民衆は我々と同じ善良な人間達です。問題は一党独裁をいいことに権力と利権を貪る8000万人と言われる中国共産党員の存在です。コロナといい、三峡ダムといい共産党の存在の基盤が揺らいでいることを世界は知り始めています。

 

2020年7月2日            嫌だ!

 イエルサレムのガザ地区の歩道を、日本人の夫人が歩いていました。5、6人の学校帰りの女の子とすれ違いました。その途端、「キャー、コロナ!」と女の子達は叫んで逃げました。夫人は痛く傷つきました。なぜなら、パレスチナ人のために働いていたからです。ブラジル・サンパウロでの出来事。日本人の老婦人が歩いていると、肌の黒い男性から「チャイナ!」と、憎々しげな白い目で見られ、唾を吐きかけられました。いずれも、ごく最近の出来事です。

 いま、街の病院は閑古鳥が鳴いています。感染を恐れて人々が行かなくなったのです。私自身、二日に一度は近くの整形外科へ行って首のけん引をやって貰っていたのですが、2月以来、一度も行っていません。月に一度は持薬をもらいに近くの医院へ行くのですが、診察はオミットして処方箋だけをもらって来ます。病院も患者が減って困っているのではないでしょうか?

 この傾向は何も自分だけのモノではなく、世界中の人々に共通する現象になっているように思います。 感染を恐れる余りの過度の心配とその取り越し苦労。つまり、人間不信、自己保存のための過度の警戒感。親しい友人と会っても、分かれた後で手を洗いアルコール消毒する自分。ああー、嫌だ、嫌だ!

 

2020年7月1日            コロナ賠償

 世界保健機構が2005年に作り上げたものに、「世界保健規則」があります。そこには「加盟国はウイルスを検知後、24時間以内にWHOに通達し、その後も、引き続き詳細な情報を通知する義務を負う」、とあります。

 中国は武漢肺炎を11月には知ったにも拘わらず、1月初めまで通知をしませんでした。しかもペドロフが1月に訪中した際、中国の影響を受け過ぎて、ことの重大さへの理解が不足し、中国の言うがままを鵜呑みにして世界に発表してしまいました。ペドロフにも重大な責任はありますが、中国は国際保険機構第6条と第7条に明らかに違反しました。

 イギリスのヘンリージャクソンという医療機関がこれを捉えて、中国に対して「賠償金を支払え、その金額はG7だけで4兆ドル(430兆円)である」との声明を出しました。取り敢えずイギリスが属しているG7としての要求です。恐らく、G7の各国はこの要求に同調するでしょう。改めて会議が開かれ、金額はもっと高騰するかも知れません。当然のことながら、G7以外の国々も賠償を要求し始めるでしょう。一帯一路を導入している特にアフリカの国々は、固唾を飲んでことの成り行きを見守る筈です。アフリカ・タンザニアの大統領は、既に中国マネーを拒絶しました。曰く、「一帯一路の条件を受け入れるのは、酔っ払いだけだ」と。

 

 

2020年6月30日            粗大ゴミ

 拙宅には道路に面して車庫が二つあって、一方には積年のガラクタが詰まっています。タイ・チェンマイへ運んで少数民族の学校へ運ぶつもりで購入したカワイのアプライトピアノもそこに治まっています。何せ、船便の運賃がベラボウに高く、向こうで買った方が廉いぐらいなので、どうしたものか、と思案中です。

 過日、畏友のHさんが三日間泊まりがけで来てくれて、車庫から家の周辺まで綺麗に片づけてくれました。その時に出た粗大ゴミを今日は車に積んで近くの処理場へ持ち込みました。過去、2,3回は経験しているのですがとても複雑です。先ず、市役所の係に申し込みます。モノに応じて値段が決まります。コンビニへ行ってシールを買い、住所、氏名、申し込み番号を書き入れます。例えば、古いプランターは10個で400円です。実に煩瑣です。でも、戸棚や本棚などの大物は、言われたとおりの値段のシールを貼って、決められた日に外へ出しておけば、取りに来てもくれますからその点は便利です。

 聞くところによれば神奈川県では、種類を問わず何でも良いから車に積んで持ち込むと、重量を計り、荷物と車の重量の差による決められた値段を払えばよいとのこと。この方が実に合理的です。東京都も、神奈川方式を採用してくれればなあ、と思ったことです。

 大事にとって置いてあった亡妻が使った車椅子、この際、思い切って処分に持ち込みました。思えば6年間、私はこの車椅子を押しました。そして、72才でクモ膜下症で亡くなって14年が経過しました。私が車椅子を使うときは電動式にする積もりです。

 

2020年6月29日            澄まし女よ、去れ

 東京都知事選も残すところ、あと、一週間となりました。泡沫候補は兎も角、実質的には山本太郎、小池百合子、宇都宮健児、小野泰輔、立花孝志の5人に絞られているようです。面白いのは選挙候補者の宣伝カーからのガナリ声を、この10日間一度も聴いたことがない、ことです。家が目白道路からさして離れていないにも拘わらずです。他方、山本太郎の駅前演説はかなりの人出だそうで、人気は高まる一方だ、と仄聞します。小池百合子は?というと、今回は街頭演説には出ないとのこと。専ら、毎日、テレビでのコロナの報告に出ずっぱり、だとか。これも一つの作戦でしょうが、そんなに呑気にしていていいものでしょうか? 選挙民は候補者の汗水垂らす姿を見て優劣を決めるのです。小池は女性票を当てにしているのでしょうが、表へ出て、汗をかき、声を涸らす姿が全くなくて、果たして当選するでしょうか?

 今回替わったのは、候補者同士の討論会をN・H・Kが取り上げなくなったことです。舌戦を期待していたのですが、これもコロナのお蔭で小池百合子に有利に傾きました。オン・エアーでもいいからやるべきなのに、舌戦では山本太郎に敵わないとみて、自民党から横槍が入ったのでしょう。残念至極であります。

 私は当初、もう一期小池でいいか、と思っていた一人です。だが、街頭に出て声を涸らしている人間と、知事室に治まって、アクションを起さないでいる女性を比較するとき、これからの難局をこの女性に任せてはおけない、とハッキリ思うようになりました。だから、私の一票はドンキホーテ男に投ずる積もりです。

 

2020年6月28日          いわゆる日本料理

  身体が動く内に 、もう一度行ってみたい外国はいろいろですが、何といってもオーストラリアのメルボルンが第一でしょうか。日本とは正反対の気候ですから、これから冬に向かうご当地です。最初は夫婦で、2回目は語学留学をする三男を連れて、そして最後は孫に会いたいという母親を伴って、都合、三回行きましたか。

 メルボルンは緑の多い落ち着いた街で、人々の表情も穏やかそのもの、実に気に入りました。地酒のワインも、数あるチーズも、フランスものと遜色なく、その点も魅力でした。ただ、料理についてはもう一つだった記憶が鮮明です。オーストラリア人の家庭に招かれてご馳走になったことがありましたが、出てくる食材のほとんどが、蒸すか、茹でるかしたものにドレッシングを付けていただく、という誠に単純なものであり、それがまた現地の料理だというのには、いささか参りました。レストランになっている路面電車にも乗って料理をいただきましたが、何種類ものドレッシングがご馳走のほとんどで、これは一体どういうことだ、と訝りました。

 三男が寄留させて貰っていたご家庭のご夫婦が、日本へやってきました。名だたる日本料理店にご案内しました。次から次へと色とりどりの食器にほんの少しずつ運ばれてくる料理は半ば芸術的でさえあります。ご夫妻は目を丸くし、驚嘆しながら日本料理を賞味し、日本へ来て料理を学び、メルボルンで日本料理やをやりたい,とまでご夫妻は褒めちぎりました。

 いま、日本のホテルの食事のほとんどは、バイキング形式に替わっています。仲居さんが部屋まで夕食を冷めないように次から次へと運んでくる形式は、もう、ほとんど無くなりました。人出不足もあるのでしょう、いわゆる懐石膳は余程の高級料理屋さんか京都の古風なところへでも行かない限りお目にかかれません。

 本来なら毎年の6月の今日は、熱海のニューフジヤホテルで20名近くが集まって囲碁の会をやる日です。1万円で泊まれるのですが、食事はご多分に漏れずバイキングです。それも、2〜300人がごった返しながら、あまり美味しいとはいえない料理の取り合いです。食事は、殊に夕食は、何でもいいから口に入れる、というのは実につまらない。食材を味わい、器を賞味しながら、美酒に酔いしれる、そうありたいなあ、と思うのは贅沢なのでしょうか。

 

2020年6月27日          北京雹天

 北京蒼天という言葉があります。秋の慣用句ですが、抜けるような秋の青空のことを言います。それほど北京の空が碧く澄み渡っていました。20年ほど前になりますが、私も北京でそれを感じたことがありました。それよりも以前40年程前に行った時は、真冬でしたが北京は自転車の洪水でした。空は青く澄み渡っていました。

 ところが一昨日から昨日にかけて北京の空はエラいことになりました。雹(ひょう)が 降ったのです。それもこぶし大の氷の塊が、、、音を立てて、、、無数に、、、 北京市民の驚くまいことか。何か良くないことの前兆ではないか? 多くの市民の不安そうな表情がユーチューブに大写しになりました。

 一ヶ月ほど前、オーストラリアと中国の間が険悪になり、今までの友好関係がご破算になりましたが、今度はスエーデンです。スエーデン籍の中国人を巡っての争いがエスカレートし、スエーデンは中国の数多くの都市との姉妹協定を破談にしてしまいました。元々、中国共産党は、数年前の中国人のノーベル賞受賞に難癖を付けていた経緯があるものの、世界で最も住みやすいと言われるスエーデンが中国を切り捨てたのです。インドも行動を起こしました。中印紛争は領地を巡って、昔からあるものの今回はかなりの規模の武力衝突です。双方にかなりの死者が出ている模様ですが、中国側は詳らかにしていません。ただ、両国は核兵器を所有しています。その数500〜600発。インドは貧しくても、中国製品の輸入を禁じ始めました。今まで世界は中国の労働力に頼っていたのですが、コロナ禍を契機にインドへシフトし始めたようです。

 6月に入ってから中国の南部では大雨による洪水被害、北京を中心とする北部では氷の雨! 14億5000万人の中国人の多くは「これは何かある!」と感じているのではないでしょうか?

 

2020年6月25日                        歩 く

 いま、最寄りの駅まで歩くとき、自分の歩く速度が遅くなっているのに気づき、愕然としています。若い人に負けまいと歩幅を大きく取り、懸命に頑張るのですが自然と離されてしまいます。

 高校時代の三年間は休みのほとんどは山歩きをさせて貰っていました。長野の清水さんが主宰する、教え子達の「ドンドン講」というグループに入らせて貰っていた関係で、北アルプス、南アルプスのほとんどの山を踏破してきました。最も長かったのは、信濃大町に一泊、針ノ木岳に登り、下って黒部川のほとり「平らの小屋」で一泊。登って室堂で一泊、剣沢で一泊、剣岳に登って降りてきて一泊、2000メートル余り下って欅平で一泊、黒部川の桟道を遡って十字峡で一泊、トロッコに乗って宇奈月から富山へ出て、深夜長野へ帰ってきました。

 谷川連峰縦走もありました。長野から高崎へ出て上越線で月夜野で一泊、四万温泉から平標(タイラッピョウ)の山小屋で一泊、千の倉岳から谷川岳肩の小屋で一泊、茂倉岳から残雪のある芝倉沢をグリー制動で降りてきて、湯桧曽川から土合駅に着き、長野へ帰りました。新潟の越後駒ヶ岳、八海山の縦走もしました。南アルプスの塩見岳から入って大天井、北岳、も踏破しました。乗鞍岳へも登りました。

 社会人になりましたが外勤社員ですから歩くのが仕事です。町から町へ、村から村へ良く歩きました。お蔭で東日本の地理や地勢には人一倍詳しくなりました。九州小倉へ単身赴任したときも、折に触れ小倉と門司境に聳える八幡山へ何度か登りました。八幡山の上昇気流を捉えて、渡り鳥たちが空の彼方へ消えていくのを何度も見送りました。

 60代は専らスポーツクラブです。しばしば仕事中にそれとなく抜け出し、築地から豊洲の「ドウースポーツ」へ通いました。ジャズダンスにも参加しました。

 70代からは旅です。国内、国外を問わず、旅がいいのは必然的に歩かざるを得ないことです。歩く以上に気にかけるのは自身の安全です。絶えず五感を研ぎ澄ましていなければ生存に拘わります。

 2月以来約4ヶ月間、コロナのお蔭で蟄居を強いられています。それはそれで幸せな日々ではあっても、歩くことに関しては丸っきりです。だからといって散歩する習慣は私にはありません。再び、若い人に交じってスポーツクラブでエクササイズするのも気が引けます。イヤハヤ、どうしたものでしょう?

 

2020年6月24日            村八分

 村八分とは古い言葉ですが、地域社会からその一家が除け者扱いにされることを差します。その現象が、あろうことか世界中に広がりを見せ始めました。仮に「コロナ八分」とでも言いましょうか、コロナに罹った人、及びその一家眷属との付き合いを一切絶つ、という社会現象です。噂は噂を呼び、その家族は社会的に孤立化を強いられます。仮に軽症で済んで退院したとしても、世間の目は許しません。今までの付き合いをピタッと止めてしまうのです。

 この現象は後進国であればあるほど顕著です。例えばスリランカ。その屈辱に耐えられず自殺に追い込まれた、という話も伝わっています。

 一方、国と国の間でもその現象が顕著に起き始めています。その対象は中国人です。オーストラリアでは、いま、中国人は一切入国出来ない、と聞き及びます。ヨーロッパの一部では、東洋人を拒絶するレストランが出始めたとか。大きな意味では、世界は中国を村八分にし始めたように思えてなりません。

 昨夜、ある集まりでそのことが話題になり、これからはパリのレストランに入るときは、日の丸の小旗を胸に挿して入らねばなるまいなあ、と大笑いになりました。

 

2020年6月23日           中国の三重苦

 今、ユーチューブの画面に中国桂林・重慶の大洪水の速報が届いています。全部が中国語ですが、そこはそれ漢字ですから判読は出来ます。そのもの凄さは過日の日本の岡山や長野の善光寺平らの水害の比ではありません。濁流は水面近くの家をなぎ倒し、橋や鉄橋を破壊し、何千、何万という車を水没させています。画面を正視出来ないほどの惨劇です。中国語の報道によれば164の河川が決壊し、行方不明者は無数、死者の数は全くの不明だそうです。

 高層ビルなど地階の電気系統がやられますから、エレベータは不能となり、浄水や下水はままならず、食料の備蓄もないようですから、惨状は目も当てられないほどでしょう。気の毒でなりません。

 加えて湖北省の三峡ダム決壊の噂まで流れています。衛星写真で見るとダムは至る所で変な曲がり方をしています。中共当局は「設計の範囲内」と公式発表していますが、識者によれば決壊は時間の問題だそうです。もし、決壊が現実となれば、6億人が被害を受けると予測されています。下流の上海ですら水浸しになるとのこと。

 ユーチューブで流れる昨日、今日の映像を見る限り、国も地方も行政は何ら手を差し伸べていないとか。泥水に半分浸かりながら、家族が食事する光景まで映し出されましたが、同じ人間同士として同情を禁じ得ませんでした。

 一方、北京ではコロナが猛威を振るい出しています。中国の奥地ではどうしたことか「サバク飛びバッタ」が緑という緑の葉っぱを食い荒らし始めています。中国共産党がこの三つ巴の苦境に対して、どう人民を守るか、主義主張はどうであれ、人間の命にか拘わる問題です。世界が注視しています。

 

2020年6月22日          風雲児

 昨日の午後7時から中野駅北口で、知事選候補者山本太郎の立ち会い演説会があるというので、物見高い私は車で出かけました。北口に設えられた演壇の周りで「令和新撰組」の揃いのシャツを着た若者が右往左往しています。1000人ほどの主として若い人達がそれを取り囲んだでしょうか。

 演説が始まりました。山本太郎はのっぺりした顔立ちの中肉中背の男です。二人の身体障害者を国会議員に当選させ自分は落選したことから始まりました。

 話は上手い、淀みがない、数字を縦横に駆使する、笑いを捕れる、聴衆が拍手をするサワリを心得ている、弱者を第一に考える、そこに政治がある、コロナ禍を激甚災害に指定すべきである、そのために都債を15兆円発行する、都民には更に10万円一律、第二波、第三波は必ずやってくるからその時も10万円、などなど。

 久しぶりに熱の籠もった演説を私は聴きました。その是非は兎も角、情熱を感じました。1000人の聴衆が四回も拍手喝采した演説、そうザラにあるものではありません。翻って、同じ候補者である宇都宮や小池にこの情熱があるでしょうか?

 伏魔殿東京都庁を改革するのは、この山本太郎かもしれない、と今回の投票はこの男にしよう、と思ったことです。

 

2020年6月21日          広島騒動

 広島の新幹線停車駅三好から連絡船に乗り、最初に寄港するのが生口島です。私の恩人永井大三さんが生まれた島です。永井さんは幼い頃、遊んでいて目に竹槍が刺さり、いつも白いガーゼをメガネに当てていました。一ツ橋大学を出て朝日新聞に入社。販売部長、営業局長、そして常務取締役営業局長になり、新聞界の三巨頭と言われるまでになりました。その三人とは読売の務台、毎日の梅島、そして朝日の永井でした。私は長野の清水さんの縁で学生時代から柿の木坂の永井さんの家に出入りさせて貰っていたお蔭で朝日に入れたので、永井さんは大恩人です。

 当時の総理大臣は永井さんと同じ広島出身の池田勇人でした。「貧乏人は麦を食え」と言ったとか言わないとか、物議を醸した総理大臣です。永井さんとは肝胆相照らす仲だったようです。「ホテルの個室で待っているとやなあ、池田一人で来ると思ったら5,6人が一緒にぞろぞろ来よるんよ。警護の人らは便所の中まで付いてくるよってに、池田はほとほと困っていたわなあ」

 その池田勇人が作った派閥が「広池会」です。今の首領は外務大臣経験者の岸田文夫です。早稲田出の岸田は親分としてはどうも貫禄が今一つです。案の定、つけ込まれました。河井夫妻の選挙で岸田派の議員は敗北し、新人の河井法相の妻安里が当選を果たしました。背後から応援したのが安倍晋三です。自民党の金一億五〇〇〇万を秘かに河井陣営に渡しました。白い封筒はばらまかれました。検察がその裏付けを取り、数日前、夫妻は逮捕されました。今は二人揃って留置所です。この事件の裏は、安倍晋三自身が次期総理と目される岸田文夫の広池会の弱体化を狙ったことです。その魂胆が白日の下に晒されました。こともあろうに、昔なら兎も角、選挙に金銭を絡ませてまで勝とうとするその嫌らしさ。その当人を法務大臣にまで任命した安倍晋三。今は地下にオワス池田勇人と永井大三が晋三野郎に鉄槌を食らわすこと必定でしょう。

 

2020年6月20日           ラフレシア

 私の仕事場の一角には、奇妙な植物が三つ垂れ下がっています。小さな蹴鞠のようなところから30センチほどの長さの、根と言うべきか、髭というべきか、銀色のもじゃもじゃが垂れているのです。チェンマイの王室植物園で見つけ、一個50バーツで購入し、2月7日スーツケースに忍ばせて持ち帰りました。寒さには耐えがたかろうと思って室内の棚に固定し、三日に上げずスプレーで水をかけていました。

 ところが、どうも様子がおかしい。銀色のふさふさが変色し始めたのです。既に死んでしまったのか、と訝りながらも、昨日、豪雨の中、ベランダに出し、雨水を存分に浴びせてやりました。今朝は快晴です。気のせいか枯れかけていた銀色のもじゃもじゃが生気を取り戻したように見えます。ああ、もっと早く気がついて外の空気に触れさせるのだった、と自分の迂闊さを責めました。

 同じような植物は沖縄にもありました。確か、サルオガセと言ったと思います。しかし沖縄のものは、蹴鞠状のものはなく、ただのもじゃもじゃだけでした。かなりの量をを沖縄から持ってきて、猫額のベランダに当時生えていたガバの木に弦下げていた時期もありました。

 南国には奇妙な植物が一杯です。チェンマイの街の一隅に植木市場があって、面白いことこの上無しでした。いま、私が願っているのは、熱帯雨林でしかお目にかかれない「ラフレシア」に会うことです。この巨大な植物は食虫植物で、得も言われぬ悪臭を放って動物を呼び寄せ、かなり大きなものまで食べてしまうそうです。何でも、赤道直下のボルネオ島まで行けば会えるとか。夢は膨らみます。

 

2020年6月19日             爆 破(2)

 板門店の一角は公園になっていて、昔、南北を貫通して走っていた蒸気機関車などが展示されていました。大きなビルの屋上には数十台の望遠鏡があり、覗くと北朝鮮の軍人などが動く姿を見ることができました。その一角には祭壇が設けられていて献花の山が出来ていました。チョゴリ姿の老婦人たちが長い線香を捧げながら、熱心な祈りを捧げていました。恐らく、肉親同士が無残にも引き離され、その安否を気遣っての祈りであったでしょう。

 金日成から始まった北朝鮮の共産主義と世襲制は、「チュチエ」という独特の考え方に由来します。一度その原本に目を通したことがありましたが、マルクス・エンゲルスの思想に、東洋的儒教の解釈を加えた、いわば、為政者にとって都合の良い経典になっていました。

 ドイツ・ベルリンの壁は壊され、東ドイツは既に崩壊しました。ウイーンからベルリンまで旅をしたとき目にしたのは、至る所に放置されている国営企業の残骸でした。やがて、ソ連邦も崩壊しました。ゴルバチョフがそれをやりました。私の学生時代、マルクス・エンゲルが全盛でした。早稲田でも、神田でも古本屋には左翼系の書物が山積していました。アルバイトした金をはたいてそれらの本を買い込み、資本論を机上に置き、解らないながら「反デユーリング論」を開き、学生運動に加わっていました。九州大学の向坂逸郎は神さまのような存在でした。それがどうでしょう。潮が引くようになくなってしまいました。

 今、世界で共産主義の亜流の政治体制にあるのは、中国と北朝鮮だけです。しかも北朝鮮では、その指導者が世襲制という独特な体制を今もって維持しています。ところがいま、武漢発生のコロナウイルスによって世界中からの非難を浴び始めた中学共産党の基盤が揺るぎ始めました。一方、北朝鮮の金正恩も健康問題を抱えていて動静が詳らかでありません。既に死んでいるという情報もあり、その地位は妹の金与正が既に継いでいるという説も横行しています。それを内外に示すための板門店連絡所爆破、という説まで飛び交ってます。  

 

2020年6月18日           爆 破(1)

 朝鮮半島を南北に分断する38度線上に位置する板門店へは、ソウルから二時間ほどで行けてしまいます。かなり昔、ロッテホテルからバスでそこへ向かいました。程なく到着すると、乗客全員は厳重な身体検査を受け、鉄条網が張り巡らされた一本道を更に進みます。続いて今度は国連のバスへの乗り換えです。国連兵が二人バスに乗り込んできました。一本道の両側は大平原です。見渡す限り茂みのような草むらは見渡せません。気がつくと、その平原には鳥も虫もチョウチョウも、蜘蛛の巣さえも見あたりません。少しでも動くものがあれば銃声が響きわたるのでしょう。ああ、ここは死の世界だ、と溜息が出ました。

 双方の建物には二人ずつの兵士が銃をもって対峙しています。その間の距離約100メートル。中間に小さな建物がありました。観光客はそこへ行って38度線の境界を越えることが出来ました。

 2年前、この同じ場所で韓国の文在寅と北朝鮮の金正恩が互いに握手をし抱擁し合いました。そして、その時の約束によって双方の連絡場所としての建物が建立され、つい最近まで機能していました。南北統一を目指したい文在寅にとって、自分の理想を実現するための掛け替えのない場所であるはずでした。爆破の命令を下したのは金正恩の妹の金与正です。彼女は爆破するだけでなく38度線に軍隊まで派遣しています。理由の一つは脱北者連合が北へ向かって飛ばす宣伝ビラです。一度に数千万枚を飛ばすそうです。軽量化された風船が付いていて、一部はピヨンヤンまで届くそうです。韓国政府が規制しようとしても、現行の法律では表現の自由のせいで出来ないとのこと。加えて、南が北へ約束したアメリカの経済規制の緩和の取りなしがままならないこと、そのいらだちが行動になったとも伝えられています。解らないのは文在寅の態度です。彼の理想とするところが木っ端微塵に砕かれたのに、いまだに声明を発していません。余程の打撃だったのでしょう。

 それにしても、ツラツラ思わされたのは、朝鮮半島に住む人々の気性の激しさです。ことによると内戦が勃発するかも知れません。もし、そうなれば、ソウルは火の海になるでしょう。

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